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障害者雇用の就活・仕事・配慮・給与・転職

障害者雇用は障害のある方が働きやすい環境で安定したキャリアを築くための重要な制度です。しかし、仕事内容や給与、受けられる配慮など、具体的なイメージが湧きにくい方も多いかもしれません。この記事では障害者雇用における仕事内容から給与、配慮、転職までの全体像を詳しく解説します。

障害者雇用での仕事内容は?

障害者雇用における仕事内容は多岐にわたり、障害の種類や程度、本人のスキルや希望に応じて様々な選択肢があります。

主な職種と業務内容

事務職
・一般事務:書類整理、データ入力、電話対応、来客応対
・経理事務:伝票処理、帳簿記録、請求書作成
・人事事務:社員情報管理、労務手続き、採用事務
・総務事務:備品管理、会議準備、社内イベント企画

IT関連職
・システム開発:プログラミング、システム設計
・Webデザイン:ホームページ作成、バナー制作
・データ分析:統計処理、レポート作成
・IT事務:システム管理、ユーザーサポート

製造業
・組立作業:部品の組み立て、検査業務
・品質管理:製品検査、品質チェック
・梱包・発送:商品の梱包、出荷準備
・設備管理:機械メンテナンス、安全管理

サービス業
・販売職:接客、レジ業務、商品管理
・清掃業務:オフィス清掃、施設管理
・軽作業:ピッキング、仕分け作業
・カスタマーサポート:電話対応、問い合わせ処理

専門職
・デザイン:グラフィックデザイン、商品企画
・翻訳・通訳:文書翻訳、会議通訳
・研究職:データ分析、研究開発
・教育関連:教材作成、指導補助

業務の特徴と配慮

障害者雇用では一人ひとりの特性に応じた業務配分が行われることが多く、以下のような特徴があります

・段階的な業務習得:まずは簡単な作業から始めて徐々に複雑な業務を担当
・得意分野の活用:個人の強みや特技を活かせる業務への配属
・チームでのサポート:同僚や上司からのサポートを受けながらの業務遂行
・明確な指示系統:曖昧さを避けた具体的で明確な業務指示

業務レベルの向上

最初は単純作業から始まっても、経験を積むことで責任ある業務を任されたり、プロジェクトリーダーとして活躍したり、管理職へ昇進するなど、着実なキャリアアップが可能です。

・責任ある業務の担当
・後輩指導やメンター役
・プロジェクトリーダーとしての活躍
・専門性の高い業務への挑戦

給与や正社員登用は?

障害者雇用における給与や正社員登用について、実際のデータと現状を詳しく見ていきましょう。

平均給与の実態

厚生労働省が公表している「平成30年度障害者雇用実態調査結果」によると、障がい者の1ヶ月の平均賃金は11万円~21万円程度となっています。

障害種別の平均給与

・身体障害者:約21万円
・知的障害者:約11万円
・精神障害者:約12万円

注意点:この数値は、フルタイム・パートタイム、正規・非正規など、全ての働き方を含んだ平均値です。働き方によって給与は大きく異なります。

給与格差の要因と正社員登用の現状

障害を理由に不当に低い賃金を設定することは法律で禁止されています。しかし、一般雇用と比較して給与が低い傾向にあるのは、以下の要因が関係しています。

1. 雇用形態:体調管理などの理由から、契約社員やパートタイムなど非正規雇用で働く方の割合が高い。
2. 勤務時間:通院などに配慮した時短勤務を選択する方が多く、フルタイム勤務より月収が低くなる。
3. 業務内容:障害特性により業務内容に制限がある場合、担当できる業務の範囲が給与に影響することがある。

正社員として働く方の割合は身体障害者で約53%ですが、知的障害者では約18%、精神障害者では約30%とまだ全体の割合は低いのが現状です。

 

給与・キャリアアップのための戦略

1. 正社員を目指す:最も確実な給与アップの方法です。安定した勤務実績を積み、スキルをアピールすることが重要です。
2. スキルと専門性の向上:業務に関連する資格取得やIT・語学などの専門スキルを習得することでより条件の良い仕事に就ける可能性が広がります。
3. 福利厚生の活用:給与だけでなく住宅手当や食事補助などの福利厚生が充実している企業を選ぶことで実質的な手取りを増やすことができます。
4. 転職による条件改善:現在の職場で経験と実績を積んだ後、より良い条件を提示する企業へ転職することも有効な戦略です。

 

職場で得られる配慮

障害者雇用では、「合理的配慮」として法的に定められた配慮を受けることができます。合理的配慮とは、障害のある人が日常生活や社会生活をおくる上での困難さを一人ひとりに合わせた周りからのサポートや環境の調整によって軽減するための配慮のことです。

合理的配慮の法的背景

障がいがあることで働きづらさを感じるということが無いよう、全ての人が平等に、社会の一員として共に歩んでいくことが大切です。障がい者が働きづらさを感じている場合には、周囲の人が協力してその課題を解決するために取り組むべきことが法律で定められています。(障害者差別解消法 第7条第2項、第8条第2項)

具体的な配慮の種類

環境面での配慮

物理的環境の調整
・車椅子対応の机やトイレの設置
・段差解消のためのスロープ設置
・照明の調整(明るさや色温度の変更)
・騒音対策(パーティション設置、静かな作業スペースの提供)
・温度調整(個別エアコンの設置)

設備・機器の配慮
・拡大読書器の設置
・音声読み上げソフトの導入
・大型モニターの提供
・特殊なキーボードやマウスの導入
・補聴器対応の電話設備

業務面での配慮

勤務時間・勤務形態の調整
・時短勤務制度の利用
・フレックスタイム制の導入
・通院のための休暇取得の配慮
・在宅勤務の許可
・休憩時間の延長や回数増加

業務内容の調整
・本人の特性に応じた業務配分
・集中力が必要な作業時の環境確保
・複雑な業務の段階的な習得
・チェック体制の強化
・明確で具体的な指示の提供

コミュニケーション面での配慮

情報伝達方法の工夫
・口頭説明に加えて文書での指示
・図解やイラストを使った説明
・手話通訳者の配置
・筆談での対応
・メールやチャットツールの活用

人間関係のサポート
・定期的な面談の実施
・相談窓口の設置
・職場内での理解促進研修
・メンター制度の導入
・チームでのサポート体制構築

配慮の申請と実施プロセス

1. 配慮の申し出 本人から人事担当者や直属の上司に対して、必要な配慮について相談・申し出を行います。
2. 話し合いと検討 企業側と本人が話し合い、実現可能で効果的な配慮方法を検討します。医師の意見書や専門機関からのアドバイスも参考にします。
3. 配慮の実施 決定した配慮を実際に導入し、効果を確認します。
4. 定期的な見直し 配慮の効果を定期的に評価し、必要に応じて内容を調整します。

配慮を受ける際の注意点

建設的な対話:一方的に要求するのではなく、企業と話し合い、共に解決策を見つける姿勢が大切です。
段階的な実施:まずは小さな調整から始め、効果を見ながら徐々に最適な形を探していくのが効果的です。
WIN-WINの関係:配慮によって自身のパフォーマンスがどう向上し、組織にどう貢献できるかを伝え、お互いにとって良い関係を築くことを目指しましょう。

 

転職はしやすいのか

企業の障害者雇用義務により求人数は増加傾向にあり、特に実務経験や専門スキルを持つ人材の需要は高まっています。

転職しやすい条件
・3年以上の継続勤務など、安定した実務経験がある
・ITスキル、語学力、専門資格などを持っている
・体調管理が安定しており、必要な配慮を自分で説明できる

転職が困難になる要因
・1年未満など短期間での離職を繰り返している
・企業側の負担が大きすぎる配慮を一方的に要求する
・基本的なビジネススキルや業務への意欲が不足している

転職成功のための戦略

1. キャリアプランの明確化:3〜5年後の目標を定め、転職理由を整理する。
2. 支援機関の活用:障害者専門の転職エージェントやハローワーク、就労移行支援事業所などを積極的に利用する。
3. 応募書類と面接対策:これまでの実績や貢献を具体的に示し、必要な配慮を的確に伝える準備をする。

障害者雇用|就職・転職に向けた完全準備リスト

成功のためには事前の準備が欠かせません。以下のリストを参考に計画的に準備を進めましょう。

① 書類関係の準備

□ 障害者手帳(身体・療育・精神)の取得・更新
□ 主治医からの診断書・意見書
□ 卒業証明書、資格取得証明書など

② スキル・能力の準備

□ 基本的なビジネススキル(PC操作、ビジネスマナー、報連相)
□ 希望職種に応じた専門スキルの習得
□ 必要であれば職業訓練の受講

③ 自己理解の深化

□ 自分の障害特性(得意・苦手、集中できる環境など)を把握する
□ 必要な配慮を具体的に、理由と共に説明できるように整理する
□ キャリアビジョン(短期・中期・長期の目標)を設定する

④ 就職活動の準備

□ 応募書類(履歴書、職務経歴書)の作成と推敲
□ 面接対策(よくある質問、障害や配慮に関する説明の練習)
□ 企業研究(事業内容、障害者雇用の実績、求める人物像の分析)

⑤ 支援機関との連携

□ ハローワークや就労移行支援事業所、転職エージェントへの登録・相談
□ 障害者職業センターでの職業評価や相談

⑥ 健康管理・体調管理

□ 規則正しい生活習慣の確立
□ 定期的な通院と主治医との情報共有
□ セルフケア(ストレス解消法など)のスキル習得

⑦ 周囲のサポート体制

□ 家族の理解と協力を得る
□ 友人や知人など、相談できるネットワークを持つ

⑧ 経済的な準備

□ 求職期間中の生活費計画を立てる
□ 失業保険など、利用できる社会保障制度を確認する

まとめ

障害者雇用は適切な準備と理解があれば誰もが自分らしく輝けるキャリアを築くことができる優れた制度です。最も重要なのは障害を「克服すべき問題」ではなく「活かすべき特性」として捉え、自分に合った働き方を見つけることです。

時間をかけて着実に準備を進め、理想的な職場環境での就職・転職を目指しましょう。

 

作業療法士 大石 純

 

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